どの成長戦略を選びますか?事業計画や補助金申請に役立つ「アンゾフの成長マトリクス」

アンゾフの成長マトリクスとは成長戦略の方向性を見つけるフレームワーク

新型コロナ禍、人材不足、脱炭素などにより事業環境が変化する中で企業は成長を目指して模索する必要があります。そのような時、事業をどのように成長させるべきかの方向性を見つけるフレームワークがアンゾフの成長マトリクスです。

マトリクスとはビジネス用語としてはマス目の表などを指します。

アンゾフの成長マトリクスでは

縦軸が市場(顧客)  の2マス  既存市場と新規市場

横軸が商品(サービス)の2マス  既存市場と新規商品

2×2=4マス つまり4通りの成長戦略として表現されます。

①既存製品×既存市場 = 市場浸透戦略

  現在の事業を強化し、市場をより高め、より深めること

②新規製品×既存市場 = 新製品開発戦略

  現在の市場(顧客)の新たなニーズをとらえて新たな製品(サービス)を作り出すこと

③既存製品×新規市場 = 新市場開拓戦略

  現在の製品(サービス)を、新たな市場(顧客)に展開していくこと

④新規製品×新規市場 = 多角化戦略(狭義の意味で)

  新たな製品(サービス)を作り出し、新たな市場(顧客)に展開すること

アンゾフのマトリクスを知らなかったという方でも、事業戦略を立てる際に無意識にこの4つのいずれかにあてはめて考えているはずです。また、補助金申請(事業再構築補助金など)や経営革新計画の認定申請などで事業戦略を表現する際にも、この4つのどれかについて根拠立てて説明をすることになります。

今回の記事でお伝えしたいのは、それぞれの難易度や効果の違いがあるという事です。それを知った上で自社のあるべき姿の実現に向けた事業戦略の構築に活かしていただければと考えています。

4つのマス(マトリクス)それぞれの難易度の違い。市場(顧客)を知っていることは強み!

4つの戦略には難易度の違いがあります。難しいものを左から順に並べると次のようになります。

④多角化戦略 > ③新市場開拓戦略 > ②新製品開発戦略 > ①市場浸透戦略

難易度の違いのポイントとなるのはその市場や顧客を持っているか(または知っているか)という点です。

良い技術・製品を持っているにも関わらず全く売れていない、ということがよくあります。とくに中小企業にありがちです。それだけ「顧客を作る」「顧客ニーズを掴む」というのは難しいことなのです。

①市場浸透戦略

最も取り組みやすい戦略です。簡単に言えば既存製品の市場シェアを拡大することです。シェア拡大ができれば、コスト競争力やブランド力が強化され収益性を高めていくことができます。

しかし、この製品市場が成熟したレッドオーシャンの場合、さらに言えば衰退していく市場である場合には市場浸透戦略で収益性を高めることは困難であり、以下の②③④を検討していかなければなりません。

新製品開発戦略

現在の市場や顧客に対して新たな製品(サービス)を提供します。冒頭でお話したとおり現在持っている市場や顧客という強みを活かせる点が最大のポイントです。市場のニーズを日常の取引データや市場調査などを分析して新しい製品を開発することになりますが、その際に次の3つを考慮することが大切です。

  • 現在の経緯資源(技術、人材、設備、販売チャネル)をどう生かすか、配分するか
  • 現在の製品との相乗効果(シナジー)がどう得られるか
  • 顧客ニーズをどのように掴むか

特に3つ目の顧客ニーズが最重要です。アンケートやインタビューという方法がすぐに思いつきますが、顧客はいま存在する物しかイメージができないということに留意が必要です。固定電話しかなかった時代に「スマホが欲しい」というニーズを語る顧客はいないのです。そこで「困りごとの解消」や「快適の実現」などという市場や顧客のベネフィット(便益)という観点からからニーズを見つけだすということが有効です。

新市場開拓戦略

新たな市場エリアを広げたり、新たな顧客層をターゲットとして既存製品を展開していきます。新しい市場(顧客)を獲得することはそう簡単ではありません。まずは製品や自社のことを知ってもらうための活動から始めなければならないためです。

マーケティングにおいて顧客の購買行動を表したAIDAの法則というものがあります。Attention(製品・会社を知る)→ Interest(興味、関心をもつ)→Desire(欲しいと思う)→Action(買う)というプロセスの中で、どのプロセスを改善するかを検討するためのフレームワークです。

新市場開拓戦略ではこのAttention(製品・会社を知る)という最初のプロセスから始めなければなりませんので、広告や販促、販売チャネルの構築のための金銭的・人的・時間というコストを要することになります。

一方で従来の市場での実績やブランド力を持っていれば、スピーディーな新市場開拓が期待されます。また、新市場開拓のノウハウ獲得というのも会社取って大きな強みになるでしょう。

多角化戦略(狭義の意味で)

新たな製品(サービス)を新たな市場(顧客)に展開するという、最も難易度の高い戦略です。ニッチもサッチもいかなくなった状態で飛び込むのではなく、既存事業の余剰資源を用いて小さく始めるのが理想です。

しかし、他社には真似できない強力な強み(コアコンピタンス)がある、既存事業とのシナジー効果が期待できるのであれば、多角化という戦略も十分に選択肢としてあます。

リソースが分散するというデメリットがある反面、社会変化の中でリスクを分散できるというメリットは無視できません。

4つのうちどの戦略を選ぶべきか?大切なのは客観的な現状分析(内部と外部)

この答えは会社によって異なるとしか言いようがありません。というのも、その会社の市場が成長市場なのか衰退市場なのかによってとるべき戦略は全く違ってきます。また、どのように生き残っていきたいのか、例えば技術を残すことに意義を見出すのか、それとも成長を目指すのかという会社の目指す姿(ビジョン)によっても選ぶべき道は異なってきます。

ここからはこの記事のまとめでもあり、最もポイントとなる部分です。

いきなり戦略を決めるのではなく「現状の分析」から始めてください。

具体的には

「外部分析」としてPEST分析SWOT分析(機会、脅威)・3C分析(顧客、市場、競合)、5フォース分析(仕入先、販売先、競合、代替品)

「内部分析」としてSWOT分析(強み、弱み)・VRIO分析(自社の経営資源)・コアコンピタンス分析(強みの点数化)

などを行なった上で戦略を構築していくことが大事です。

これらの分析方法については改めて取り上げたいと思います。

余談ですが、経営コンサルタントが事業計画の策定サポートをする際には必ず現状分析を行います。中小企業診断士の「診断」とはまさに現状把握と分析を指しています。現状把握をせずに作った戦略は絵に描いた餅となりかねません。慣れるまでに少し時間はかかりますが、事業を継続・発展させるためには必要なプロセスです。回を重ねるごとに抑えるべきポイントが分かりスピードも上がりますのでぜひ実施してみてください。

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