試用期間の長さに制限はあるのか?試用期間にはいくつかの意味がある?

試用期間にはいくつかの意味がある

多くの会社で用いられている試用期間。この試用期間は法的にいくつか意味があり全く別のものです。

①労働基準法上の「試みの使用期間」としての試用期間

②民事法上の「解約権留保付契約期間」としての試用期間

③期間の定めのある雇用契約(有期契約)としての試用期間

もっとも一般的に認識されているのは②です。それぞれを解説します。

①労働基準法上の「試みの使用期間」

労働基準法 第21条で定められている採用後の14日以内を指します。

この条文では

「解雇予告、解雇予告手当に関しては試みの使用期間中の労働者には適用しない。ただし、試用期間が14日を超えて引き続き使用されるに至った場合においてはこの限りでない。」入社してから14日間(歴日数)は、解雇予告期間を設けず即時に解雇できる、とされている期間のことです。

少し補足をします。通常、解雇をする場合に会社は次のいずれかを行うという義務がありますが、試みの使用期間中はこの義務を免れるというものです。

・30日前までに解雇予告をする

または

・解雇予告にかえて解雇予告手当(平均賃金の30日分以上)を支払う

労働基準法において試用期間について言及しているのはこれのみです。

なお次の②③とは別物であり、試用期間を14日以内にしなければならないという事ではありません。

②会社が決める「解約権留保付契約期間」としての試用期間

会社によっては、見習い期間や研修期間などと表現していることもあります。

試用期間を設けるかどうか、どれだけの長さにするかなどは法律上とくにルールはありません。(長さについては2で解説)

一般的に試用期間を設ける意味は「採用はしましたが正式採用とするまで●カ月間は様子を見させてもらいます。もし合格ラインと認められなければ採用を取り消します」というようなものです。

民事裁判においては試用期間を「解約権が留保されている雇用契約の期間」と定義しています。

多くの方がイメージしてる試用期間と大きな違いはなく、何か問題があれば雇用契約が解消(=解雇)される可能性がある期間、という意味です。

しかし、

経営者がイメージする解雇できるレベルと、裁判所がOKと判断するレベルに大きなギャップがあります。(このレベルについては4で解説)

③期間の定めのある雇用契約(有期契約)としての試用期間

イメージできないという方もいらっしゃるかもしれません。

例えば

「4/1~6/30までの有期契約を結び、その間の仕事ぶりやスキルを見た上で7/1からの新たな無期契約を締結するかを判断する」というものです。

ハローワーク求人でよく見る「トライアル雇用」が典型的な例です。

この有期雇用を試用期間と呼ぶべきかどうかは判断が分かれるところですが、実務上は存在しています。

留意点もありますので3で解説します。

試用期間の長さに法的な制限はない。しかし、、、

試用期間の長さについて法律上のルールはありません。前述したとおり試用期間を設けないことも当然できます。

多くの会社を見てきた中では一般的には3カ月が最も多いと感じます。中には1カ月や1年という会社もありますし、上記1①の試みの使用期間を意識してか14日としている会社もあります。

いずれにしても会社ごとに必要と考える期間を設定すれば良いのですが、1年以上となるとさすがに長すぎるかもしれません。「社会通念上いかがなものか」とトラブルになった際に無効の判断をされる可能性があります。

また雇われる側からすれば試用期間は身分が不安定は期間と感じますので、本当に必要な期間とするのがベターと考えます。

ちなみに当事務所では3~6ヶ月をご提案することが多いです。

理由は4つあります。

・入社後1カ月程度では、問題点が表面化しない可能性があり短すぎる

・1年では長すぎて応募者が不安を感じる

・ハローワークがトライアル雇用としての判断期間を3カ月としている

・公務員は試用期間が6カ月とされている

試用期間を期間の定めのある雇用(有期雇用)とすることはできるか

有期雇用を試用期間と呼ぶべきかどうかは微妙なところです。

前述のとおり民事上の定義では解約権留保付契約期間、つまり無期雇用契約における一部の期間とされているためです。実際、厚生労働省が公開しているパンフレット「求職者とのトラブル防止のために、求人内容を明確に記載しましょう!」では

「試用期間とは、一つの雇用契約のなかの最初の一定期間を、職務適性を見極めるための試用の期間として取り扱う場合をいいます。~中略~

最初の有期雇用とその後の雇用とで、別の雇用契約を結ぶ場合には、最初の契約による期間は「試用期間」とはなりません。」

とも記載していますので、試用期間の定義はやはり無期雇用の中の一部という認識なのでしょう。

しかし、別の厚生労働省パンフレット「労働者を募集する企業の皆様へ」では次のように記載されています。これを見る限り、実態として試用期間の意味合いを持つ有期雇用が一定数あるのでしょう。

「有期労働契約が試用期間としての性質を持つ場合、試用期間となる有期労働契約期間中の労働条件を明示しなければなりません。また、試用期間と本採用が一つの労働契約であっても、試用期間中の労働条件が本採用後の労働条件と異なる場合は、試用期間中と本採用後のそれぞれの労働条件を明示しなければなりません。」

試用期間だから簡単に解雇ができる、は間違い

試用期間だからといって、解雇のハードルが極端に下がることはありません。

基本的に、客観的合理性と社会通念上の相当性が必要であるという点では通常の解雇と同様です。

試用期間に特有な判断基準としては

「採用後の勤務状態など当初は知ることができないような事実を知った場合で、そのような事実に基づき本採用を拒否することが合理的かつ相当であると認められる場合」

とされています。

例えば

・経歴などの詐称

・スキルが事実と大幅に異なっていた

・健康面で業務に支障がある

などがあげられます。しかしこれらに該当するとしてもすぐさま解雇できると考えるのは危険です。

経歴詐称の場合は

「業務に不可欠な事項に関する詐称であるのか。採用の可否に影響する詐称か」

という点を確認する必要があります。

スキル不足や健康不良などについては

「採用時に会社は具体的に確認したのか」

「教育することでスキル習得はできないのか」

「他の業務や部門で働いてもらうことはできないのか」

ということを検討する必要があります。

採用した以上は会社にも雇用継続するための努力が求められます。

試用期間であっても解雇は最終手段であると認識すべきでしょう。

人事労務でお困りなら、社労士に直接相談できるWEB専門の労務顧問 「WEBサポ社労士|労務の困りごとはスマホで解決!」はコチラから

コメント

タイトルとURLをコピーしました