誤解している方が多い「労災かくし」とは?

誤解されている労災かくし

企業活動の中で時どき耳にする「労災かくし」という言葉。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                     しかし、意外と多くの方が誤解していると感じます。

現場責任者「社長、A社員が作業現場での仕事中に骨折をしました。救急車で運ばれて病院で治療を受けているそうです。労災保険で治療を受ける手続きが必要ですね

社長「いや。今回は民間保険の保険金が下りるから、治療代は全額会社が払うことにするよ

現場責任者「社長、それって労災かくしになりませんか?

このように、労災事故の治療代や休業補償を「労災保険を請求しない」ことを労災かくしと思っている方が意外と多いのですが、これは労災かくしではありません

《補足:業務災害を健康保険証を使って治療を受ける事について》                これも労災かくしと言えなくもありませんが、本来の労災かくしとは意味合いが異なります。    不正が発覚した際には、労働者は治療代の7割を現金で返済し、会社は使用者としての補償をしなければなりません。結局は労災保険で申請する事になり、とりあえずはそれで完了します。       というのも健康保険も労災保険も請求者は「労働者」であるからです。

労災保険を使うことは義務ではない

労働者が一人でもいれば必ず会社として労災保険に加入する義務があります。           しかし、事故が起きたときに労災保険を使うことは義務ではありません。            「それってどいうこうこと?」と思われるかもしれませんので少し解説します。           労災保険には各種の給付が用意されています。                         治療費としての療養補償給付、休業中の給与補填としての休業補償給付、そのほかにも障害や死亡に関する給付があります。                                    これらは「使用者に課せられた労働基準法上の補償義務を代替する制度」として存在します。

労働基準法上の「使用者の補償義務」とは次のようなものです。

  • 療養補償(治療代のすべて)
  • 休業補償(休業中の所得補償として平均賃金の6割)
  • 打切補償(3年たっても治らない場合に平均賃金の1,200日分)
  • 障害補償(障害の程度に応じて)
  • 遺族補償(遺族に対し平均賃金の1,000日分)
  • 葬祭料 (平均賃金の60日分)

しかし、これらのお金を会社が捻出できない場合もあります。そうなると労働者は困ります。    そこで生まれたのが労災保険の制度です。                           労災保険による各給付は、上記の労働基準法の補償内容を「上回る」内容になっており、労災保険による給付が行われることによって「使用者は補償義務を果たしたことになる」しくみです。

このように労災保険は使用者の補償義務を果たす一つの手段であって、必ず労災保険を使わなければならないという事にはならず、労災かくしにはあたらないのです。                 とはいってもせっかく加入している労災保険を使わないケースはめったにありません。

それでは労災かくしとは一体なにを指すのでしょうか。

労災かくしとは死傷病報告を提出しないこと

労災事故が起きて労働者が休業や死亡をした場合、使用者には「労働者死傷病報告」を労働基準監督署に提出する義務があります。根拠となるのは労働安全衛生法という法律です(労災保険法ではありません)。労災かくしとはこの労働者死傷病報告を提出しないことをいうのです。

〔死亡・休業4日以上の場合〕

 様式第23号

 災害発生後遅滞なく(1ヶ月以内)

〔休業1日以上3日以下〕

 様式第24号

 1月~3月の災害⇒4月末日まで

 4月~6月の災害⇒7月末日まで

 7月~9月の災害⇒10月末日まで

 10月~12月の災害⇒翌年の1月末日まで

労災かくしは犯罪です 送検されるケースも

忘れていた・知らなかったなど悪意がない場合には指導で済むこともありますが、

  • 故意に提出をしなかった
  • 事実と異なる虚偽を報告した

などの場合には悪質性を問われ、刑事犯として送検され、テレビや新聞などで報道されることになります。また実際に起訴されて有罪となった場合50万円以下の罰金が課されます。

労災事故が起きた際には、                                  労災保険の申請 + 死傷病報告(死亡や休業に限る)                     をセットで手続きすると覚えておくと良いでしょう。

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